2019-12-07 影 ガラス戸の向こうに、包丁を持った人影がうろうろしている。 最期に見るのがその景色なのは嫌だったので、布団を頭からかぶっていた。包丁はどこに突き立つんだろう、どうせなら苦しまずに死ねるところがいい。布団を撫でる手があった。 「あんたはこんなにいい子なのにね」 震えも涙も止まった。 今さらなにを。 心がすっと冷えていくのが分かった。刺すならこの手の主を先にしてくれないかな、そう思った。