たまの覚書

記憶を書きとめておくところ

死にかけた

母が連れてきた人だった。真冬で、外には雪がつもっていた。

車に乗せてやるから遊びに行かないか?と言われ、二つ返事で乗り込んだ。雪の積もった夜はどこか明るく感じる。

車は見知らぬ方角へ走って、まったく人気のない倉庫街?にたどりついた。

なにが起こるんだろう、ちょっと怖い。私は車に乗ったことを後悔し始めていた。

誰の足跡もついていない、真っ白な敷地に車を乗り入れる。雪遊びでもしようと言うのだろうか?

しかし彼は、私のシートベルトを確認すると、にやっと笑った。

 

「行くぞおおおおおおおお!」

「ギャアアアアアアアアアアアア」

車は信じられない勢いで発車し、フェンスに向かって疾走。叫ぶ私をよそに、急ハンドルでドリフトし、敷地を駆け抜けた。タイヤが横滑りするのが分かる。

「危ない!危ない!あぶあぶ」

「俺はトラック運転手だ!」

理由になっていない。恐ろしい音を立てながら車は何度もドリフトし、私はシートや窓に押し付けられた。なんか煙みたいの見えるんですけど……。

雪の上を無残なタイヤ痕だらけにして、男は満足した。

「どうだ!面白い遊びだったろ!」と帰り道に言われた。刺激的ではあったが、もう二度とごめんだった。

今でも覚えているくらいには、強烈な遊びだった。